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猟師の肉は腐らない

長らく留守をした。安倍政権になってから突っ込むところが少なくなったし、あまりにも悲惨な事件、紛争が続いてコメントする気力も失ってた。
それなのに久々に本の読後感を書こうと思い立ったのは、この本があまりにも面白かったからだ。
その本のタイトルが

「猟師の肉は腐らない」新潮社刊

猟師の肉

ご存知の農学博士小泉武夫先生の著作。体験談ということだが、ワシにとってはおとぎ話のような話で、ほんとにこんな人がいるの?と思うほどあっぱれな猟師と猟犬のエピソードが綴られる。
義兄んにゃ(よしあんにゃ)と呼ばれるその猟師と小泉先生の出会いは、この物語の15年前、居酒屋の店長と客との出会いからだった(もちろん小泉先生がお客さん)。
その義兄んにゃとは、店長を辞めてからも不思議な縁でむすばれる。ある時は京都で、かと思えばギリシャのエーゲ海に面した小さな漁村で飯を食ってたらばったり現れる、という具合で、信じられないような再会が続く。

数年経って、仕事に忙殺されていたある日、奥久慈上流の山に戻ってきてるらしい義兄んにゃからの便りが届く。
小泉先生は一念発起し、忙しいスケジュールの合間をぬって、その八溝山地といわれる山奥に一人で暮らす義兄んにゃのところへ向かう。その夏の5日間、数年経った冬の3日間の、合計8日間の山小屋での滞在記だ。

電気も水道も電話も通っていない。明治時代から何も変わっていないようなその小屋に、義兄んにゃと猟犬のクマが住んでいた。夜は灯油ランプの灯りのみ。囲炉裏のまわりにすわって二人は粕取り焼酎を酌み交わす。粕取り焼酎とは本来は酒粕から蒸留した立派な焼酎だということを初めて知った。肴は義っしゃんが穫ったイノシシ肉、ウサギ、イワナなどなど、牛蒡やら根菜類野菜も義っしゃんの作ったものだ。それをむしゃむしゃやりながらがぶがぶ飲む二人。その食べ物の味わいや来し方の描写が絶品で、読んでるこちらもジュワっとヨダレが出て来る。ある日は渓流釣り、ウサギ穫り、どじょうすくいなど、子供のようにはしゃぐ小泉先生。
確か現在は70歳を超えられていると思う先生だが、いつの頃の話なのか、まるで子供のように山を越え谷を渡り義兄んにゃの狩り場について行く。その時々の義兄んにゃから教わる山人の智恵、エピソードなどにいたく感動し、その精神性の深さに打たれる。日本の猟師とはこうだったのか、いや、義兄んにゃがそうだったのか?
二人の会話が福島の阿武隈弁と地元の八溝弁とのごちゃまぜで語られていて、それも微笑ましい。読んでる間ワシも福島弁がうつってしまった。
そしてなによりも猟犬のクマ。この真っ黒で、勇敢で、賢いクマがとても愛おしい。夜は自ら狩りに出て、翌朝は義っしゃんの小屋の前にウサギを並べておくような奴だ。この山の中で己の能力を最大限に発揮して生きている犬。なんて幸せな犬だろう。
合計8日間の体験は一生忘れられない思い出となったことだろう。今現在も義兄んにゃとクマが健在でいるのか是非知りたいところだ。
「義兄んにゃ〜、クマ〜、達者でやってっがい〜、ワシも遊びに行きていぞい〜」。
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